「肥前君、肥前君。主が面白い写真をくれたのだよ。見てくれたまえ」
「また何だよ先生……」
「夏に山陰に旅行に行っていただろう。和鋼博物館、と言う施設を見てきたそうだよ。和鋼とは、砂鉄と木炭を使う『たたら製鉄』で作られる鋼のことで、まあ、お馴染みの玉鋼を含む『日本古来からの製法で作った鉄』の総称だと思えば良い」
「へー」

　

　

「見てごらん、主が楽しそうに天秤ふいごを踏んでいるねぇ」
「遊びで踏むようなもんじゃなかった気がするがなぁ」
「労働も戦闘と一緒で、時代と状況が変われば遊びになり得るのさ。僕が罠の余りで裏庭に作ったさばげーのふぃーるどは、大うけだったろう？」
「長谷部にすげー怒られて、すぐ更地になったじゃねえか」




「玉鋼から作られるものとして、勿論、日本刀の展示もあったようだよ。係の人に頼めば持たせて貰えるらしい。安全の為に先端しか研いでないそうだが、まあ、太平の世の中では仕方ないねぇ」

　

　

「まあ、主が僕ら日本刀の成り立ちについて、更に造詣を深められたのは喜ばしい事だね。今回の旅行は、主のご夫君の専門でもっと古代からの遺跡も沢山訪問したそうだけど、肥前君、これ読めるかね？」

　

　

「……つ、つまきばんでん？」
「『むきばんだ』って読むんだよ。弥生時代の集落の遺跡なんだけど、主は最初パンダの施設かと思ったらしいよ。実はイメージキャラも微妙にパンダでね。『剥きパンダ』ってたれぱんだの親戚みたいで可愛いよね。たれぱんだっていうのは、昭和時代の終わりに発生したパンダっぽい生物でね。常に転がって移動するんだ。すあまが大好物で」
「……先生、俺もう寝るから」


※参考リンク→妻木晩田遺跡