島根か鳥取か わからないけど
 そこらへんに 行きました

 

by 眠林

 
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「肥前君、肥前君。出雲国水素水はあんまり売れなかったそうだよ。博多君ががっかりしていたよ」
「博多だけのせいじゃねえと思うがな……」
「やはりお金より芸術だよね、肥前君。ならばこれを見てくれたまえ」

 

 
植田正治写真美術館全景

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「殺風景な建物だな」
「近代的と言いたまえ。植田正治と言う昭和から平成にかけて活躍した写真家の作品を収めた美術館なんだよ。モデル写真が多いんだけど、シュールレアリズムの絵のような無機的な雰囲気の作品が多くて、主は大好きなんだそうだ」
「あいつ、暗くて不気味で変な絵好きだもんな」
「でね、美術館の中には、その作品と同じような演出で自分で撮影できるスポットがあるんだよ」

 

 
眠林シルエット写真

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「真っ黒じゃねえか」
「逆光は勝利って光画部のたわば先輩と言う人が言っていたからね。これが芸術というものなんだよ、恐らくね」
「へー……」

 

 
建物前景レンズ穴に矢印

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「美術館の建物にも実は仕掛けが施してあってね、前面のあの小さな穴の中にレンズがはめ込まれていて、中の部屋を暗室の状態にすれば、建物自体がカメラ・オブスキュラになると言う訳さ。これは面白い趣向だね」

 

 
窓からの風景

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「窓から見える風景1つ1つまで、まるで芸術作品のようだったそうだよ。『オプーナのアルティエラみたいだったのよ~~』って言っていたので、オプーナって何だろうと思って調べてみたんだけどね」
「おう」
「ティティア星ってとこから来た宇宙人の子供の名前で、彼が冒険した場所の1つが芸術の街アルティエラなんだよ。そして彼の冒険譚を詳しく知るためには『オプーナを買う権利』なる認可状が必要で、それを得るには、かの古今伝授にも匹敵するという権威と教養が求められ」
「……先生。歌仙が微妙な顔でこっち見てるから、ややこしくなる前に部屋に戻ろうや」